2016年3月に国内初でオンラインカジノプレーヤーが逮捕されました。ですが2017年1月に不起訴となり、違法性を決定づける結果にはなりませんでした。
以下逮捕の内容、不起訴の経緯、考察、今後についてまとめます。
オンラインカジノプレーヤーの逮捕内容
以下、産経ニュースの記事内容です。
海外のインターネットのカジノサイトで賭博をしたとして、京都府警は10日、賭博(単純賭博)の疑いで埼玉県越谷市の制御回路製作会社経営、関根健司(65)▽大阪府吹田市の無職、西田一秋(36)▽埼玉県東松山市のグラフィックデザイナー、中島悠貴(31)-の3容疑者を逮捕した。
府警によると、無店舗型のオンラインカジノの個人利用客が逮捕されるのは全国初とみられる。
逮捕容疑は2月18~26日、会員制カジノサイトに接続、カードゲームで現金計約22万円を賭けたとしている。
3人は容疑を認め、「海外サイトなら大丈夫だと思った」と話している。利用された「スマートライブカジノ」は、英国に拠点を置く登録制のオンラインカジノ。
日本語版サイトが平成26年9月ごろに開設されたとみられる。クレジットカードや電子マネーを使って賭けや払い戻しができる仕組み。日本人女性がディーラーを務め、日本語でチャットをしながらブラックジャックやルーレットなどのゲームができる。
府警によると、関根容疑者は「1千万円ぐらい使った」と供述。
ブラックジャックの利用客だけで月に少なくとも約1400万円の賭け金が動いていたとみられ、府警は運営実態や資金の流れを調べる。海外のカジノサイトを利用した賭博をめぐっては、千葉県警が2月、客に賭博をさせたとして、サイトの決済代行会社役員の男ら2人を常習賭博容疑で初摘発している。
(引用元)産経ニュース
https://www.sankei.com/west/news/160310/wst1603100084-n1.html
担当弁護士による不起訴になった主張と経緯
摘発された3名のうち1名を弁護した、賭博罪を専門とする弁護士のブログ記事が以下です。
昨年,オンラインカジノをプレイしていたユーザー複数が賭博罪の容疑をかけられた。
彼らのほとんどは,略式起訴されることに応じて(これに応じるかどうかは各人の自由である)軽い罰金刑になることに甘んじたのであるが,そのうち1人は,刑を受けることをよしとせず,略式起訴の打診に応じず争いたいとの意向を示した。弁護を担当したのは私であった。
(一部省略)
現行刑法でも,単純賭博罪は,非常な微罪である。
法定刑は罰金のみ,罰金刑の法律上の扱いは軽く,たとえばわれわれ弁護士は,執行猶予が付いても懲役刑なら資格を失うが,罰金刑なら失わない。
またこのブログで散々書いているように,今の日本は,競馬やパチンコなど,容易に合法的な賭博行為ができる環境が整っている。
つい先日には,カジノ法案も可決された。
そのような状況で,この微罪を適用して刑に処することが刑事政策的に妥当であるとは到底思えない。
単純賭博罪は撤廃すべきというのが私の主張であるし,少なくとも,この罪は今すぐにでも有名無実化させてしかるべきである。
(一部省略)
本件の特徴は,当該賭博行為につき,海外で合法的なライセンスを得ている一方当事者である胴元を処罰することはできないところ,他方当事者であるユーザーを処罰しようとする点にある。
この点は従前,必要的共犯において一方当事者が不可罰である場合に他方当事者を処罰することができるのか,という論点に絡めて語られることが多かった。
しかし,真の問題点はここではないと私は考えていた。
賭博場開張図利罪と単純賭博罪の軽重は雲泥の差である。
賭博行為について,刑事責任のメインは開張者(胴元)が負うのであり,賭博者(客)が負う責任はある意味で付随的である。
賭博犯の捜査は胴元の検挙を目的におこなうものであり,「賭博事犯の捜査実務」にもその旨記載がある。
そこには,些細な賭け麻雀を安易に検挙すべきでない旨の記載もある。胴元のいない賭博を安直に検挙することをいさめる趣旨である。
(一部省略)
オンラインカジノプレイヤーが対象となった賭博罪被疑事件で争った案件は国内でただひとつであり,そのひとつは,不起訴となった。
言うまでもなく,不起訴は不処罰であり,何らの前科はつかない。平たく言うと「おとがめなし」ということだ。
(引用元)
賭博罪改正を願う弁護士津田岳宏のブログ
不起訴の勝ち取りーオンラインカジノプレイヤーの件
https://ameblo.jp/gamblelaw/entry-12235518621.html
一連の流れからの考察・まとめ
まずそもそも日本にオンラインカジノに対する明確な法律はまだ存在しないので、「違法」という概念すらない(決定することができない)という前提があると思います。
この前提があった上で「略式起訴」(刑事裁判を行わずに罰金だけ払う簡素的な手続き)と「不起訴」という結果です。
つまり本当の裁判にしたら無罪になるのが分かってるから、京都府警の失態にならないように略式起訴で終わらせようとしたのでは?と思います。
そして逮捕=有罪ではないということを再認識する内容だと思います。
ちなみに賭博がダメなら「競馬やパチンコ」はどうなる?とも思いますし、
(津田弁護士のブログでも単純賭博罪は非常な微罪で撤廃すべきとあります)
日本の警察の検挙率が高い理由は「冤罪」が多いということも奮起させます。
(すべて個人的見解です)
オンラインカジノを今後安全にプレイするにあたって
現在の日本の賭博法では、刑事責任のメインは開張者(胴元)が負います。そのため運営側がライセンスを取得して合法である限り、日本でプレイすることも合法だといえます。
日本ではこれから法整備を進めて議論の余地がありますが、先進のヨーロッパでは法整備を「合法」で固めて税金を取るという結論になっています。
課税という国のメリットに加えて、違法にしてライセンスのない会社を利用するプレイヤーが増えることによるトラブルリスクを考慮しますと、今後は合法化流れていくのではと個人的には思っています。
今回の逮捕劇は国内初にして唯一のものであり結果は「不起訴」ですので、ライセンスを取得したオンラインカジノであれば、安心してプレイできると思います。